「なぜ最近のアーティスト名はやたら長いのか」問題に一つの答えを出せた
家でスマートスピーカー(スマートディスプレイ)のGoogle Nest Hubをバリバリ活用している。
音楽再生がメインの用途となっている。スマホを取り出す→ロックを解除してアプリを開く→アーティストを選択してシャッフルをタップというプロセスが「ねえGoogle、〇〇を流して」という一言に集約できる、という利便は何物にも代えがたいと感じる。
しかし、不便だなと感じる瞬間もある。それは、音声認識がうまく行かない時。「すみません、お役に立てません」と謝られる。
ちゃんと発音すれば再生されるアーティスト名だったら、全く問題ない。
たとえば、ヨルシカであったら、「ヨルシカを流して」が「よろしくお願いして」とご認識されて、「こちらこそよろしくお願いします」と返ってくることもあり、世界一無駄な10秒になってしまう。でも、滑舌を意識しながら「ヨ・ル・シ・カを流して」と一音一音はっきりと発音すれば、再生が始まるのでセーフだ。
しかし、Aimerはほぼ無理だ。エメと聞き取ってもらえる確率は10%くらいしかないので、挑戦することすら愚かに感じる。
さらに、致命的なのがどうやっても、流せないアーティストがあることだ。
たとえば、レキシはどうやっても「歴史」になってしまうので、つまりちゃんと音を正しく聞き取った上で、スマートスピーカー側の誤変換によっての誤認識が起こってしまうので、100%聞けない。
「スマートスピーカーに認識されない」という些細な事柄が、自分の生活における音楽を強く規定している事実に驚く。実際東京事変やずっと真夜中でいいのには頻繁に聞くし、かなりお気に入りのアーティストであるAimerを聞く機会が激減してしまった。
自分が使っている音楽サービスは、サブスクリプション型のYouTube Musicというサービスだ。つまり、1再生されるごとにレーベルにマージンが入る。
1再生ごとの単価は公表されておらず、ソースによって単価もバラバラだが、
以下のリンクによると、1再生=1円と考えてよさそう。
サブスクリプションで再生数ごとに単価が決まるという事実とスマートスピーカーのご認識によって再生できないケースがあるという事実をかけ合わせると、アーティストとしては、「スマートスピーカーにちゃんと拾ってもらえる」ことが売上につながる、大きなアドバンテージになるし、「ちゃんと拾ってもらえない」ことがかなりの痛手になるかもしれない。
そう考えると、最近目にするやたら長いアーティスト名に、分があることに気づく。「ゲスの極み乙女。」「ヤバイTシャツ屋さん」「ずっと真夜中でいいのに」「水中、それは苦しい」等々。もちろん、彼らはスマートスピーカーについて検討しながら、アーティスト名を決めたわけではない。
試しにヤバイTシャツ屋さんの由来を調べてみたら、以下のように、ただ語感がよかった、という理由であった。
このバンド名の由来は、ボーカルの「こやまたくや」が大学生時代に先輩が言った「今度、ヤバイTシャツ屋さん行きまーす」という言葉の語感が良く、
「これをバンド名にしてバンドを組みたい!」
と、思った事がきっかけなんだとか。
しかし、これがたまたまスマートスピーカーに最適化されているアーティスト名となっていたわけだ。
SEO(Search Engine Optimization: 検索エンジン最適化)に代表されるように、いかにプラットフォーム上でより多く、より良い位置で表示してもらえるかの技術や工夫は、さまざまなプラットフォームであった。
これからどんどんと大きなプラットフォームとなっていくことが予想されるスマートスピーカー。そのスマートスピーカーに「気にいってもらう」ためにSSO(Smart Speaker Optimization)の考え方が、アーティスト名の選択という意思決定に影響を及ぼす日が来るかもしれない。